新たな役割を担うオシラサマ

遠野には伝承園という古くからの暮らしを伝えるための施設があります。

その中の一角にオシラ堂という場所があり、各地から集まったオシラサマを千体展示してあります。

オシラサマは以前、二戸の旧家でお話しを伺った通り日常に溶け込んだ神様でした。

しかしながらオシラサマをお祀りするには色々な決まり事も多く、なかなか現在の生活では厳しくなってきている現状があります。そのため、お祀りを続けられなくなっている家も多く、そうしたところから集まってきています。


この伝承園を初めて訪れた時は誰もいない時間帯だったこともあり、四方の壁一面に無数に祀られたオシラサマから一斉に視線を浴びているようでとても緊張感を覚えました。


ここに祀られたオシラサマで面白かったのが、”願い事を布に書いて着せる”というスタイルです。
訪れた人が置いてある布にサインペンで願い事と名前を書き、選んだオシラサマにその布を被せることができます。神社の絵馬のような感覚ですね。

ただ単に展示してあるだけでなく、本来のものとは異なる新たな役割を担っているところが印象的でした。

確かに”オシラアソバセ”のように古くから伝わるお祀りの仕方ではないですが、今の時代に沿った方法でシンプルに新たな役割をオシラサマに担ってもらう点はものすごく良いなと個人的に感じました。

儀式は信仰心を示す一つの方法でしかないと思うので、それを表す手段は時と場所によって多様であることがむしろ日本においては自然なことなのかとも思いました。

このように古いものに新たな意味を吹き込むスタイルは今後、私たちの国の貴重な文化遺産を次に引き継ぐ際の一つのお手本になるのではないでしょうか。