神道と仏教

日本で暮らしていると、お寺や神社はどちらも身近な存在で特別に意識する機会はあまりないかもしれません。

しかしながらこれらは神道と仏教という異なった宗教ゆかりの場で、ともすれば対立関係にあってもおかしくない存在です。異なった宗教施設がこれほど違和感なく共存しているのは世界広しと言えども日本だけではないでしょうか?

大晦日にお寺で除夜の鐘をつき、その足で神社に初詣に行くという経験をしたことがある人も少なくないと思います。

とは言え現在はお寺と神社や一応区別されています。しかしながら明治以前は神社の境内にお寺があったりすることは極々当たり前のことでした。神社とお寺は明治政府の廃仏毀釈令によって無理矢理引き離されましたが、数百年にわたる習慣を変えるまでに至りませんでした。

その理由は色々とありますが、おそらく神道と仏教の役割分担がうまく出来ているからではないかと思います。神道はもともと、身近にある自然に感謝するところが信仰の基礎にあります。記紀が広まって以降、各地の神社に御祭神が定められましたが、主にそれ以前は「山の神」や「田の神」といった自然を神として感謝、祈願していました。これが神道の起こりです。

島国として大陸から離れ、独自の自然風土を備えた日本だからこそ、こうした自然信仰が広まり八百万の神の概念が生まれてきたのだと思います。神=自然とする認識がなされていました。ここが神様が自然を創造したと捉える他の一神教との決定的な違いかもしれません。


一方で仏教は個人的な問題を扱うことに長けているという特徴があります。仏教は個人の苦しみからの救済を根本におく流派が多く存在するのが特徴です。

なので神道は皆が共同体として生活していく上での拠り所となる存在であり、一方で仏教は個人が苦しみからの救済を願う存在であったと言えるのではないでしょうか。おおまかにこうした役割分担ができたからこそ、この二つの宗教が今日まで共存しているのだと思います。

どちらも日本人の倫理観、価値観の形成の基本となっています。やはり神仏習合こそが私たちに日本人にとっては自然なスタイルなのかもしれません。